精神疾患患者の負担を減らすための制度として自立支援医療(精神通院医療)という制度があります。
ここではその自立支援医療(精神通院医療)の制度を紹介します。


自立支援医療(精神通院)とは?

精神疾患における治療のため継続した通院が必要な病状の方に対し、通院のためにかかる医療費(薬剤費も含む)の自己負担額を軽減する公費による医療費負担の一種です。



自立支援医療(精神通院)制度の目的は?

精神疾患は病気の特性として症状が落ち着いている間も定期的な投薬を行わなければならない等、長期に渡って通院や治療が必要になる場合が多いと言えます。
そのため、通院を続ける場合に患者の抱える経済的負担は決して軽くはありません。
さらに、病気療養のために休職し収入源を失った状態では、医療費負担はより深刻な問題になると考えられます。
これらの問題から、長期的な通院や治療が必要な精神疾患患者の経済的負担を軽くしようという目的をもって作られたのが自立支援医療です。



対象の疾患は?

対象は全ての精神疾患とされ、通院による治療を続ける必要がある状態の方が対象となります。
代表的な疾患としては、うつ病や双極性障害などの気分障害、統合失調症、てんかん、知的障害、強迫性人格障害、薬物やアルコールなどの精神作用物質による障害などが挙げられます。
しかし、これらの疾患があれば必ずしも自立支援医療の対象になるという訳ではなく、主治医が「長期的に治療を継続する必要があると判断した場合」に限られます。
また、「現状は症状が落ち着いているが今後も継続した治療が必要であると主治医に判断された場合」にもこの制度の適用となる事があります。
これらのことから、制度の対象になるかどうかは疾患の種類やその程度に限らず、主治医の判断が重要になると言えます。
自身の疾患や状態が自立支援医療の対象になるか分からない場合には一度主治医に相談してみましょう。



医療費の負担軽減が受けられる医療の範囲は?

精神疾患やそれによって生じた病態(躁状態、抑うつ状態、幻覚や妄想など)に対して、病院等に入院しないで行われる医療が対象となります。
つまり、外来通院やデイケア・訪問看護などにおける診察費やお薬代などがこの対象とされ、さらに医療保険の対象になるものに限ります。
このため、入院における医療費や医療保険対象外(病院や診療所以外)の治療・投薬にかかる費用、精神疾患と関係のない病態に対する治療にかかる費用は医療費負担軽減の対象外となります。
また、注意点としてこの制度による医療費の軽減が受けられるのは、各都道府県や指定都市により定められた「指定自立支援医療機関」に限られます。
精神科の多くはこの指定自立支援医療機関となっていますが、薬を処方してもらう薬局も含め、現在ご利用の機関が指定自立支援医療機関に該当するかどうかを確認しておく必要があります。



実際に負担する費用はどうなるの?

自立支援医療受給者証を提示することで、各医療機関窓口における支払いは原則1割負担となります。
また、疾病の程度や世帯の所得水準に応じて1か月の自己負担額に上限が設けられています。
これを自己負担上限額と言い、月の途中で窓口での支払い金額が設定の上限額に達した場合、それ以降の当該月の医療費については公費負担となります。
自己負担上限額が設定された場合、受給者証と共に自己負担上限額管理表が発行されるため、制度を利用するには窓口でこの両者の提示が必要になるので注意しましょう。



月額上限額はどのようにして決まるの?

受給者の属する「世帯」の収入に応じて分類されます。
ここでいう「世帯」とは住民票上の世帯に関係なく、受給者と同じ健康保険などの公的医療保険に加入する方を同一の世帯として捉えます。(※例えば、国民健康保険加入者の場合、同一の加入関係にある方全員の所得が所得区分認定の対象となります。健康保険加入者の場合は、被保険者本人の所得が区分認定の対象となります。)
また、所得の状況のみでなく、通院により高額な医療費のかかる治療を長期間にわたって続けなければならない方(本制度では「※重度かつ継続」と呼ぶ)に関しても、1か月当たりの負担限度額が低くなります。

<重度かつ継続の範囲>

(1)疾病や症状などから対象になるもの
ア.症状性を含む器質性精神障害(認知症など)
イ.精神作用物質使用による精神および行動の障害(アルコールや薬物依存など)
ウ.統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害
エ.気分(感情)障害
オ.てんかん
カ.ア~オ以外で精神保健指定など3年以上精神医療に従事した経験を有する医師が計画的集中的な治療を継続する必要があると判断した場合

(2)疾病に関わらず、高額な費用負担が継続することから対象になるもの
医療保険多数該当の者(直近1年で高額治療を継続して行い国民健康保険などの公的医療保険の「高額療養費」の支給を4回以上受けた方)



世帯所得 負担上限金額
重度かつ継続非該当 重度かつ継続
生活保護 0円 0円
市民税非課税(本人収入が80万円以下) 2,500円 2,500円
市民税非課税(本人収入が80万円より上) 5,000円 5,000円
市民税 33,000円未満 医療保険の自己負担上限額が上限 5,000円
市民税 33,000円以上~235,000円未満 10,000円
市民税 235,000円以上 制度対象外 20,000円


申請方法

自立支援医療(精神通院)の申請方法についてはこちらの記事をお読み下さい。