最近、食欲低下や睡眠不足、なんとなく気分が落ち込む状態が長く続いている…
という事はありませんか?その症状、うつ病かもしれません。
うつ病は、年々患者数が増加しており、誰にでも起こり得る身近な病気と言えます。
周囲からなかなか理解されにくい場合も多いですが、うつ病を放置すれば日常生活に様々な支障を来たす事になるため、適切な治療を受ける必要があります。

   

うつ病とは

うつ病は、気分(感情)障害の一種に分類されます。
気分障害というのは、気分が極端に落ち込んだり高揚したりするといった気分に関する症状が生じる疾患で、うつ病や双極性障害がこれに含まれます。

日常生活を送る中で気分が落ち込んだり高揚したりするということは誰にでもあると思いますが、
このような単なる気分の変化と異なる点としては、気分障害では正常の範囲を超えて特定の気分が長期間持続します。
それにより、気分の波を自身でコントロールする事が難しくなり、日常生活にも支障を来たすようになります。

うつ病は、気分が落ち込んだりやる気が起きなくなるといった「うつ」の状態が一定期間持続した場合に診断されます。
また、このような気分の強い落ち込みや意欲低下といった精神的な症状に加え、不眠や疲れやすさ、体のだるさなどの
身体的な症状も現れることがある病気なのです。

 

うつ病の原因

はっきりとした原因はまだよくわかっていないというのが現状ですが、
単一の原因だけでなく様々な原因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

うつ病の原因に関する最近の研究では、なんらかの原因で脳に作用する神経の伝達物質の働きが悪くなるという事が分かってきています。
それに加えて遺伝的要因やうつ病になりやすい性格、ストレスや環境の変化などの様々な要因が重なって発症するのではないかと考えられています。

うつ病になりやすい人には、共通して以下の3つの様な傾向があると言われています。
・循環気質:陽気で明るく社交的な面と、物静かで気弱といった面を併せ持ち、情緒が変化しやすい。
・粘着気質:几帳面で責任感が強い。仕事熱心で執着心も強く完璧主義の傾向がある。
・メランコリー親和型:秩序を重んじ、周囲への気遣いを欠かさない性格。ルールに固執するあまり、うまくいかなかった場合などに自己を責める。

※このような性格であるからいって、必ずしもうつ病になるわけではありません。

うつ病の診断

まずは、医師が問診からうつの状態を把握し、診断基準に照らし合わせながら病的な状態であるのかどうかの評価を行います。
主訴やこれまでの経過、成育歴、本人の性格や考え方など、様々な観点から診断を行います。

また、うつ病の診断基準には、世界保健機構(WHO)の国際疾病分類であるICD-10、アメリカ精神医学会のDSM-ⅣもしくはDSM-Vが主として使用されています。

【例】DSM-Ⅳの場合 
下記症状のうち少なくとも“抑うつ気分”か“興味や喜びの減退”を含む
5つの症状が同時に2週間以上続く場合に「うつ病」と診断されます。
・抑うつ気分         ・易疲労性または気力の減退
・興味や喜びの減退      ・無価値感または罪責感
・体重の変化、食欲減退    ・思考力の減退または決断困難
・不眠または睡眠過多     ・死についての反復思考
・精神運動静止または焦燥

しかし、うつ病以外の病気でもうつ状態が生じることがある為、他の疾患との鑑別が必要です。
また、この基準に当てはまるからといって必ずしもうつ病という訳ではなく、
様々な観点から総合的に判断する必要があるので注意しましょう。

 

うつ病の症状

うつ病と言えば、よく言われる気分の落ち込みや無気力感といった、精神的な症状が強く出るイメージがありますが、精神面だけでなく身体面にも症状が現れる事があります。
以下に主な症状を挙げます。

【精神症状】抑うつ気分、不安、焦燥感、イライラ、無気力、集中力や思考力低下
      意欲低下、興味の喪失…など

【身体症状】睡眠障害(不眠、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒など)、倦怠感、食欲減退、
体重変動、体の重さや痛み、動悸や息苦しさ、頭痛や頭重感、のどの渇き、易疲労性…など

これらは一般的なものなので、単に「うつ病」と言っても、現れる症状は人により異なります。自分の症状を正しく医師に伝え、治療に役立てましょう。

 

うつ病の治療

うつ病はその原因がはっきりしていない事に加え、人により現れる症状が様々であるため、
治療もそれぞれの人に合わせて行う事が重要です。
ここでは、よく行われている一般的な治療の一例について紹介していきます。

・治療の第一歩は、まず病気であるという事を認めて休む事!
うつ病の原因の一つとして、その人の本来の性格や周囲の環境が影響しているのではないかという事は先にもお伝えしました。
そのため、まずはこのような原因と考えられるものから離れる必要があります。
うつ病になりやすい性格として、真面目で責任感が強いといった特徴があることから、
「休むのは甘えだ」と抵抗感や罪悪感を感じてしまう方も多いようですが、
思い切ってストレスを感じる環境から抜け出す事も大切な治療の一つなのです。
仕事や人間関係などから解放されることで心身共にゆっくりと休め、生活リズムを整えましょう。

・薬物療法
服薬はうつ病の基本的な治療の一つです。
多くの場合は、症状に合わせて処方された薬を服薬します。
また、うつ病の治療薬は効果が現れるまでに時間がかかる薬が多いことから、長期間にわたって服薬を続けていく必要があります。
具体的には、主に抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬などが用いられます。

・抗うつ薬:脳の神経伝達物質の働きに作用し、抑うつ気分り除いたり、意欲を向上させる等の効果があります。
・抗不安薬:不安を抑える効果があります。抗うつ薬と一緒に用いられる場合があります。
・睡眠薬:睡眠に問題がある場合に、乱れを整えるために処方されます。

この他にも、必要に応じて抗うつ薬の効果を高めるような薬を併用する場合などもあるようです。
服薬治療においては、用法・容量を守って規則正しい服薬を心掛けることが大切です。
副作用が気になる場合も、自己判断で服薬をやめずに医師に相談しましょう。

精神療法
医師が患者の不安な気持ちを理解した上で、精神的な安定を目指す一般的な方法(一般精神療法)や、
専門的な知識や経験のある医師との対話などによって、うつ病の背景となる自身の考えの偏りや性格などの理解を深めてよりよい方向へシフトさせていくといった方法(認知療法)など、この他にも様々な方法があります。

精神療法では陥りやすい考え方を自覚して修正を試みる為、再発予防にも有効ではないかと言われていますが、
時間がかかることも多いので、薬物療法と併せて行う事が重要です。

長期的な治療が必要になる場合も多いため、周囲の人のサポートも不可欠であると言えます。
適切な服薬が行えているか、普段の様子の変化からうつ病のサインは無いか…など、見守る人がいることは再発予防にも有効と言えるでしょう。

患者自身は正しい治療を受けると共に、治療の効果によって症状が落ち着いた場合にも、
ストレスをためないようなライフスタイルの獲得を心掛け、再発予防を目指しましょう。